
歯科にとって、いかに患者様に痛みをできるだけ与えず、安心させる説明、治療をおこなうことは、大きなテーマの一つといえます。
このテーマに対して、最近になり静脈内鎮静法というものが使用されるようになってきました。
ここでは、静脈内鎮静法の内容、効能、安全性について説明します。
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1.「静脈内鎮静法」とは?
「静脈内鎮静法」とは、インプラントなどの、大きな歯科治療で補助的に行う処置で、精神を安定させる薬剤を、血管から投与し、患者様を半分意識のない状態に導きます。
静脈内鎮静法で使用する薬剤によって、患者様から歯科治療に対する不安や恐怖心を取り除き、術中に受けるストレスなどが軽減される効果があります。
また、痛みに対してもストレス軽減効果があり、治療が知らない間に終わっているという利点があります。
更に、歯科治療中のストレスからくる血圧の変動も抑えることができますので、高血圧や不整脈などの方もこの静脈内鎮静法を使用するメリットが大きいと言えます。
1-1.静脈内鎮静法の使用の流れ
まず静脈内鎮静法を使用する当日には食事制限があります。
使用の流れとしては、歯科治療を始める30分前くらいに来院して、動脈内鎮静法を実施します。
治療が終了した後も、2時間くらいはボーっとした状態が続きますので、各医院のリカバリールーム等で意識がはっきりしてくるまで、休むことになります。
この治療法を行うケースとしては前述したインプラント治療や、親知らずの抜歯、一度に多くの治療を行う場合、その他1時間以上かかる治療などがあります。
1-2.静脈内鎮静法を以外で同様の効果を得る治療法
また、歯科では患者様の精神を鎮静させてリラックスさせる方法として、静脈内鎮静法の他にも笑気ガスを吸入させる方法があります。
笑気ガスは、歯科治療恐怖症の方や、小さなお子様にも治療が受けられるようにという事を主な目的として使用されています。
笑気と呼ばれる麻酔ガスを鼻から吸引することによって、興奮や、不安を取り除き落ち着いた状態で歯科治療を受けることができます。
笑気の成分には亜酸化窒素が含まれていて、内臓に対する影響や副作用が少なく、麻酔効果もすぐに抜くことができるといったメリットがあります。
静脈内鎮静法は血管を通して薬を体内に注入するので、薬の効果が強く、笑気麻酔を適用する患者様よりも、もっと侵襲性の強い歯科治療を受ける患者様に適用されます。
薬の働きが強いため、しっかりした設備と技術が必要となります。
2.静脈内鎮静法で使用される薬
静脈内鎮静法に使用される薬剤には、睡眠薬としても使用されているベンゾジアゼピン薬、全身麻酔や鎮静剤として使用されるプロポフォール、ベンゾジアゼピン拮抗薬があります。
2-1.ベンゾジアゼピン薬
ベンゾジアゼピン薬は、1960年代に開発された薬です。
それ以前に使われていた睡眠薬がバルビツール酸系といわれるものです。
このバルビツール酸系は、服用量を間違えて死に至ったり、幻覚症状などの副作用がありました。
ベンゾジアゼピン系は副作用が少なく、命の危険をともなうことが少ない薬で、現在使用されている睡眠剤のほとんどがこれにあたります。
ただし、緑内障、重症筋無力症の患者様には使用することができません。
2-2.プロポフォール薬
プロポフォールは、全身麻酔にも使用される薬ですが、体内に吸収される薬の量を調整しやすく、静脈内鎮静法にも使用できます。投与時に血管痛がでるのがデメリットと言えます。
2-3.ベンゾジアゼピン系拮抗薬
ベンゾジアゼピン系拮抗薬は、静脈内鎮静法で、もうろうとなった意識の回復を目的として使用されるお薬です。
さんかん系抗うつ薬を服用している方、てんかんの既往のある患者様では、痙攣が誘発される恐れがありますので注意が必要です。
3.静脈内鎮静法、笑気ガスでの診療費
笑気ガスや静脈内鎮静法は、口腔外科や大学病院などの大きな設備のある所では大半が行っていますが、一般の歯科医院では実施している所とそうでない所があるので、希望する方は事前に問い合わせる必要があります。
両方とも保険の適用となり、実質負担は笑気ガスでは1,000円以下、静脈内鎮静法では治療内容等の条件が合えば保険が認められ、3,000円位の実質負担となります。
ただし、インプラントなどの保険外診療と一緒に希望する場合は、自由診療扱いとなり、数万円かかる場合もありますので、事前に受診される歯科医院に確認されることをお勧めします。
まとめ
静脈内鎮静法は、一般歯科診療では、患者様の意識がはっきりしない状態で治療を行うため、患者様にとっては不安や痛みを軽減できるメリットがあります。
一方、歯科医師によっては、静脈内鎮静法によって患者様の意識がはっきりしない状態での治療がやりにくいと感じる先生もいらっしゃるようです。
基本的に患者様の希望が優先されますが、主治医が治療を行いやすい環境を整えるというのも、治療の結果を考えたときにとても重要な要素となります。
これは静脈内鎮静法に限らずどんな治療にも当てはまります。
治療を受ける前に、しっかりと治療について相談を行い、内容を理解した上で治療を進めることをお勧めします。
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