
歯周病にかかると、歯根膜や歯槽骨といった歯周組織が破壊されてしまいます。
これらは歯が正常な状態を保つのに不可欠な組織ですので、歯周病によって破壊されてしまうと、最終的には歯自体が抜け落ちてしまうのです。
そこで適用されるのが歯周組織再生誘導法と呼ばれる歯周病の治療法です。
ここでは歯周組織再生誘導法の術式について詳しく解説します。
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1.歯周組織再生誘導法とは
歯周組織再生誘導法とは、歯周病が重症化した症例に対して適用されます。
特に歯槽骨と呼ばれる歯の土台となっている部分が溶けてボロボロになった患者さんに対して施されることが多いです。
具体的にはエムドゲイン法やGTR法といった術式が実施されており、治療が上手くいけば破壊された歯周組織を再生させることができます。
2.エムドゲイン法について
エムドゲイン法とは、歯根や歯槽骨を再生させる薬剤を歯根表面に塗る方法です。
術式としては、フラップ手術によって歯茎を切開し、歯根を露出させます。
肉眼でも確認できるようになった歯根面にエムドゲインと呼ばれる薬剤を塗布し、石灰した部分を再び縫合します。
このエムドゲインは、もともと幼い豚の歯を作るタンパク質が原料となっており、歯根に塗り付けることで歯根や歯槽骨を再生が期待できます。
3.GTR法について
3-1.GTR法の術式
GTR法とは、メンブレンと呼ばれる吸収性の膜を使用することで、歯根や歯槽骨の再生を図る術式です。
エムドゲインと同様、フラップ手術によって歯根を露出させて処置を施します。
代表的な吸収性膜はジーシーメンブレンと呼ばれるもので、臨床の現場でも広く使われている人工膜です。
3-2.人工膜でなぜ歯周組織が再生するのか
ここで気になるのが、人工膜を使うことでなぜ破壊された歯周組織が再生するのかという点ですよね。
歯周病は、歯の表面に歯石などの汚れが沈着することで発症します。
歯石や歯垢の中には、沢山の歯周病菌が生息しているため、歯茎や歯槽骨に炎症を生じさせるのです。
そこで必要となるのが歯石の除去ですが、歯茎の下の歯根面に付着した歯石というのは、歯ブラシではもちろん、通常の歯科治療でも完全にとり除くことが難しくなります。
ですから、フラップ手術で歯茎を切開して、歯根面を綺麗にスケーリングするのです。
ここで重要なのが、切開した歯茎をそのまま元に戻してしまうと、既に破壊されている歯根や歯槽骨はなかなか再生されないという点です。
なぜなら、そのまま歯茎を縫合すると、綺麗に掃除した歯根面や歯槽骨の周囲に軟らかい組織が再生されてしまい、歯根や歯槽骨といった硬い組織は破壊されたままになってしまうからです。
GTR法では、メンブレンと呼ばれる人工膜で一枚隔てることで、軟らかい組織が歯根面や歯槽骨の周囲に集まるのを妨げることができます。
その代りに歯根や歯槽骨を再生させるための硬い組織が集まり、結果的に歯周組織の再生へとつながっていくのです。
4.歯周組織再生誘導法の利点について
歯周組織再生誘導法では、歯茎を切開したり、特別な薬剤や人工膜などを使ったりなどして治療を進めていきます。
その術式だけを聞くと、とても大掛かりなものに感じられて、治療に対して消極的になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、実際はそれほど大掛かりな処置というわけでもなく、術者が何人も必要で、全身麻酔下で行わなければならないようなものでもありません。
そして何よりも重要なのは、歯周組織再生誘導法によって歯槽骨や歯根膜といった歯周組織が再生されるという点です。
虫歯となると、目に見える形で歯が溶けたり、痛みを感じたりしますが、歯周病となると症状を自覚しにくいケースも多々あります。
それだけに、積極的に治療を受けようとは思えないかもしれません。
けれども、歯槽骨や歯根膜などの異常は、歯の異常と同じくらい致命的なものですので、歯周組織再生誘導法によって治療する価値は十分にあるといえます。
5.まとめ
このように歯周組織再生誘導法というのは、少し複雑な術式のように思えますが、歯周組織の治療効果が非常に高い処置法といえますので、歯周治療の選択肢として検討する価値はあります。
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