
よく「親知らずの抜歯は難しい」と言われますが、普通の抜歯の手順と違いがあるのでしょうか。
また、抜歯の過程で起こり得るリスクはあるのでしょうか。ここでは、親知らずの抜歯を検討されている方の疑問や不安を出来るだけ解消すべく、抜歯の流れ・手順等を紹介しながら説明します。
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1.親知らずの抜歯の流れ
親知らずの抜歯は、親知らずの生え方で抜歯の難易度が大きく変わります。
そのため、抜歯はいきなり行わず、事前にさまざまな準備を行います。
では、抜歯当日までどのような流れになるのでしょうか。
1-1.どんな抜歯になるか精査する
親知らずの生え方は主に、「他の歯と同じようにまっすぐ生えている場合」、「斜めに生えている場合」、「完全に埋没し歯ぐきの中で近隣の歯に障害を与えている場合」の大きく3パターンに分かれます。
それぞれ抜歯の方法や時間、術後の予後も違います。そのため抜歯の手順などを事前に医師と患者間で十分確認を行い、双方で合意をとります。
1-2.術前の準備
抜歯を行う前に口腔内の環境を整えておく必要があります。
それは、口腔内の環境が悪いまま抜歯すると、細菌感染を引きおこしてしまうこと危険性があり、そこから起こる「術後の痛み・腫れ」を予防するためです。必要に応じて、抗生物質が処方されます。
1-3.歯周病の治療
抜歯後の予後不良に繋がる要因となるため、歯周病が進行している場合、事前にクリーニング(歯石除去等)を行います。膿が溜まっていれば治療を行い、歯周組織の状態が落ち着いてから抜歯します。
1-4.予約の相談
親知らずは生え方によって、難しい抜歯もあります。通常は局所麻酔で抜歯を行いますが、抜歯が難しい場合、入院して全身麻酔下で行うこともあります。
また、傷口が大きい場合、通常の抜歯よりも治るのに時間もかかります。抜歯の予約を入れる際には、近々旅行の予定がないか、大切な予定と重なっていないかなど、抜歯の時期を担当医と話し合っておきましょう。
2.親知らずの抜歯の手順
術前の準備が整ったら、いよいよ抜歯を行います。
親知らずの抜歯は、生え方の違いによって抜歯の手順が違います。生え方別の手順もふまえて説明します。
2-1.歯ぐきの表面に麻酔を行う
局所麻酔注射の痛みを和らげるため、初めに刺入点に表面麻酔の塗り薬を塗布し1~2分置いて麻酔します。
2-2.局所麻酔を行う
表面麻酔後、注射麻酔を行います。
麻酔の方法は、親知らず周辺の歯ぐきに注射する方法と、親知らずの奥のほうにある太い神経をブロックする注射の方法があります。
抜歯が難しい場所などの場合には、全身麻酔を使用する場合もあります。
2-3.歯の露出(完全に埋伏している歯の場合)
完全に埋伏している親知らずを抜歯する場合には、メスで親知らず上部の歯ぐきを切開し、歯を露出させます。
2-4.歯槽骨切削(顎の骨が邪魔している場合)
親知らずがある位置が深かったり、斜めに生えて顎の骨が邪魔して抜歯できない場合、周辺の歯を支える骨「歯槽骨」を削ります。
2-5.歯の分割(歯の頭部分が抜歯の道具に引っかからない場合)
歯が横を向いていたり、斜めに生えて頭の部分が隠れているなど、抜歯鉗子(歯を抜くペンチのような道具)が歯を掴めない場合、抜歯鉗子がつかめるよう、歯をいったん分割します。
2-6.抜歯
抜歯できる状態になったら、他の歯と同じように、抜歯鉗子を使って歯を抜きます。
2-7.抜歯窩の消毒
抜歯後、歯ぐきに開いた穴に残りカスなどが無いように精製水等で洗浄します。
2-8.レントゲン撮影
抜歯後、歯の破片や割れた根っこが残っていないか、レントゲン撮影で確認します。
2-9.縫合
抜歯窩を縫合します。歯ぐきを切開した場合は、元の位置に戻して縫合します。
2-10.抜歯後の説明と投薬
抜歯当日の過ごし方や日常生活での注意点などの指導を受けます。細菌感染防止のための抗生剤や痛み止めなどが処方されます。
2-11.抜糸
抜歯窩の治り具合を確認するため、通常は、術後1週間~10日後に患者様に来院してもらいます。その際、傷の回復が順調であれば抜糸します。
3.親知らず抜歯の過程の中に潜むリスク
親知らずの抜歯は通常の抜歯よりも難しく、歯科医師も神経を使うほどの外科治療です。
抜歯の過程の中で、術後に支障をきたすリスクはあるでしょうか?
3-1.歯科医師が処置中に注意しなければならないこと
親知らずの抜歯窩は深くなることが多いです。
歯肉切開の際、内側に深く切開し過ぎると舌神経を傷つけてしまう危険性があり、術後に麻痺が出る可能性もあるので細心の注意が必要です。
3-2.術後確認を怠る事でのリスク
抜歯後レントゲンを撮影して確認を行うことを怠ると、歯の残骸が残ったまま縫合してしまいます。のちに痛みや腫れの原因になることもあります。
3-3.患者側がホームケアをしっかり行わないことでのリスク
抜歯後、クリニックから指導される注意事項を怠ると、大変な事態を招く危険性があります。
単に傷の治りを遅らせるだけでなく、事によっては、細菌感染やドライソケットなど他の別の病気の発症を引き起こすことにもなりかねません。
まとめ
親知らずの抜歯は通常の抜歯と比べ、難易度が高いことが多いため、歯科医師も事前準備や予後の確認に慎重です。
行う側の歯科医院側のスタッフも、受ける側の患者様も、双方がしっかり手順や流れを確認して臨むようにしましょう。
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