ワインやビールなどのアルコール飲料が虫歯の予防につながると聞くことがあります。
「アルコール」自体は、殺菌・消毒にも使われることは有名です。
同じように、趣向品である「お酒」に含まれるアルコールに同じような効果があるのでしょうか?
ここでは、アルコールによる殺菌・消毒のメカニズム、「お酒」に含まれるアルコールで殺菌・消毒の効果があるかについて説明します。
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1.ワインやビールなどの「アルコール」は虫歯予防にならない
1-1.消毒・殺菌効果の「アルコール」との混同での勘違い
「アルコール」といえば、確かに傷の消毒や器具の殺菌消毒など、あらゆる菌を殺菌する場合に用いられます。
そこで、趣向品として飲まれるお酒も「アルコール」と呼ばれるため、お酒を飲めば虫歯菌を殺菌することができ、虫歯予防に効果があると想像される方もいるかと思います。
1-2.成分の名称が「糖アルコール」ということからの勘違い
虫歯の原因とならない代用糖のひとつとして「キシリトール」が有名です。
キシリトールガムなどは、歯垢のpHを酸性に傾けず、唾液の分泌を促すものとして、虫歯予防にもなると言われています。
このキシリトールが「糖アルコール」とも言われるため、お酒も同じく「アルコール」と称され、虫歯予防に効果があると思われるのではないかと思われます。
2.お酒が虫歯予防に効果がない理由
2-1.お酒のアルコール濃度では作用できない
殺菌や消毒に用いられるアルコールは、濃度が70%以上の高濃度のものを使用しています。
ワインやビール等のお酒はアルコール濃度を度数で表記していますが、これは%と同じです。
ワインやビールのアルコール濃度は5%~20%弱と弱いため、虫歯予防に効果はないと言えます。
ただ、お酒の中にはアルコール濃度が70%以上のものも少ないですが存在します。
それでも虫歯菌の殺菌の効果は期待薄です。
理由は、歯にはバイオフィルムという膜を張られていることがあり、仮に70%以上のお酒を口に含んだとしても、バイオフィルムが防御壁となり、歯にアルコール成分がほとんど作用しないからです。
2-2.「アルコール」といえばお酒だけではない
「アルコール」という名称のものは、飲料だけでなくさまざまなものに利用されています。
例えば、燃料や薬品、香水や化粧品にも含まれています。
そもそも「アルコール」と名のつくものすべてが、殺菌・消毒効果があるという訳ではありません。
3.逆にお酒は虫歯になりやすくなってしまうのか!?
3-1.飲酒で唾液の分泌が少なくなる
お酒を飲むと利尿作用が働きます。
そこで体の水分が少なくなり、唾液の分泌まで抑制されてしまうのです。
唾液量が少なくなると口腔内の殺菌作用や自浄作用が機能しません。
そのため、虫歯菌の増殖しやすい環境を生み出してしまいます。
「お酒を飲んだ日は歯磨きしないほうがアルコール成分で殺菌してくれる」と勘違いして、酔っぱらったまま寝てしまうと、虫歯は勿論、歯周病や口臭の原因にも発展してしまいます。
3-2.お酒はダラダラと長時間になることが多い
お酒は短い時間で飲むということはほとんどないのではないでしょうか。
お酒を飲むときというのは、おつまみを食べながらダラダラと何時間も飲むということもあると思います。
お酒の成分には「糖質」も含まれており、常に口の中の常在菌が酸を放出している状態であり、虫歯ができやすい環境になると言えます。
3-3.ワインなどをよく飲むと起こりやすい「酸蝕症」
虫歯は、虫歯菌が作り出す酸によって歯が溶かされたものだけではありません。
飲み物などの酸が強いものを常飲することにより、歯が直接的に溶かされた状態も虫歯の一種です。
これを「酸蝕症」といい、ワイン愛飲家によくみられます。
他にはスポーツをする際にスポーツドリンクを常飲している場合や炭酸飲料、お酢などでも起こることがあります。
4.お酒を飲んだ時の正しい虫歯予防は?
お酒は虫歯予防にならないことがお分かりいただけたかと思います。
逆にお酒を飲んだほうが、さまざまな理由で虫歯になりやすい環境になることもご理解頂けたかと思います。
お酒を飲んだ後は、虫歯の予防策として、たくさん水分を補給し、寝る前に歯磨きをされることをお勧めします。
虫歯が気になる人は、一時的にお酒を控えた方が進行を緩めることにも繋がるかもしれません。
まとめ
お酒を飲むことで虫歯予防になるという考えは勘違いです。ほとんどのお酒に含まれるアルコール度数では、殺菌・消毒をすることができません。
ごく一部のお酒は殺菌・消毒用アルコールに匹敵するものもありますが、バイオフィルムがあると、それが障壁となり殺菌・消毒はできません。
また、お酒を飲むと唾液が減少するため、お酒を飲んだ後、口腔内を放置したままだと、逆に虫歯ができやすい環境になる可能性があります。
お酒を飲んだ後はきちんと歯磨きするようにしましょう。
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