今回は歯周病治療において、歯科処方の薬と市販の薬の種類と効果について説明していきたいと思います。
歯科医が処方する薬と市販の薬にはそれぞれどんな種類があり、その効果の違いにはどのぐらい差があるのでしょうか。
スポンサーリンク
歯科医院処方の薬と市販薬の違い
歯周病治療において、歯科医院で処方される薬は大きく鎮痛薬と抗生剤との2種類があります。鎮痛薬においては、市販で売られているものと、歯科で処方されるものの間に特に大きな差はありません。
しかし、多くの歯周病の急性症状が出ているケースにおいて、抗生剤と鎮痛薬はセットで処方されます。(基本的に抗生剤は市販されていません)。
これは抗生剤で、ある程度急性症状である腫れ等を抑えて、それでも痛みが残る場合は鎮痛薬を服用してもらうためです。
よって、処方された抗生剤のみで症状が抑えられる場合は、不要な鎮痛薬の服用を避けることができます。
また鎮痛剤を、どれくらいの量を服用するのか、どれ位の痛みがある時に服用するのか、他の飲み薬と併用してもいいのかなど、患者さん本人だけではなかなか判断しにくい場面も多々あります。
これらを踏まえると、基本的に歯科医の指導の元、薬を服用される方がより的確な対応となります。歯周病治療における抗生剤は、急性症状が出た際に、症状を抑える事を目的として使用されます。
抗生剤においては、前述のように特別な場合を除いては、ほぼ市販で販売されていませんので、歯科医の処方が必要になります。歯周病には数十種類以上の様々な細菌が関わっていて、当然、症例によって効果を発揮する抗生剤は異なってきます。
歯科において、薬の効果の有無を判定するのは投与を開始してから、通常3日後に行われ、長くても1週間以内にその効果が認められないと、その薬の投与を中止します。
治療薬の昔と今の違い
一昔前までは歯周病治療において、抗生剤は対症療法を目的としてしか使用されず、薬で歯周病の原因そのものを治そうという考えはありませんでした。
しかし、近年アジスロマイシンの歯周病に対する有効性に注目が集まってきています。
アジシロマイシン(ジスロマック)は、歯周病に感染している部分に長時間留まる、免疫を活性化させる、プラークなどのバイオフィルムに浸透しやすいなどの特徴があり、歯周病治療において、たくさんの良好な結果を残してきています。
近年では、このアジシロマイシンを3日間服用してもらい、その後薬の効果が持続している数日間で、歯の根の周辺の歯石取りを一気に行うという治療方法も出てきています。
この治療を受けた多くのケースで、口臭、歯肉から出血、歯肉の腫れなどへの高い効果が認められています。
また、治療前後に位相差顕微鏡で、お口の中の歯周病細菌を歯科医師と患者さんとで観察するため、患者さんもその治療効果がはっきり確認することができます。
持病がある人、妊婦さん等、薬の使用に制約がある人の投薬
やはり基本的にご自身で市販の薬を購入されるよりも、歯科で処方される方をお勧めします。
鎮痛薬の場合、成人によく処方されている、ボルタレンやロキソニンは小児では低体温を引き起こすリスクがあり、アセトアミノフェンが比較的安全とされています。
妊婦の場合も、胎児死亡、新生児死亡や分娩遅延の報告があることより、ボルタレンやロキソニンは投与されず、小児と同様にアセトアミノフェンが比較的安全と考えられています。
ボルタレンやロキソニンは母乳中にも移行するため、授乳中の患者さんの投与も避けられます。また、高齢者の場合は、薬の作用が強くでやすいので、薬は少量から経過をみながら投与していくのが基本的な考え方です。
また、以前に他の病気にかかった際に医師等から処方され、飲み切らずにお手元に残っている抗生剤を、御自身の判断で服用されるのも危険です。
例えば、妊婦さんの場合はβ-ラクタム系抗生剤のペニシリン系、セフェム系が比較的安全と考えられています。これらの薬にアレルギーがある場合は、クリンダマイシンなどのリンコマイシン系の薬が選択されます。
妊娠期間中の場合、特に胎生12週以内は胎児の体が活発に作られている時期で、胎児が薬などの影響を強く受けやすく、この期間の薬の投与は極力避けられます。
(具体的に抗菌薬の胎児への影響としては、テトラサイクリンによるテトラサイクリン歯、アミノグリコシド系の聴神経障害、クロラムフェニコールによるグレイ症候群などがあります)
まとめ
薬の人体に対して複雑に働いており、またその他の薬のとの飲み合わせによっても副作用が起こる事もありますので、御自身で市販のお薬を購入されるよりも、歯科でお薬を処方してもらう事をお勧めします。
また、歯科医院へ受診される場合は、お手持ちのお薬手帳を持っていき、そのコピーをとってもらうなどの配慮も、御自身の体を守るためにとても重要になってきますので、参考にして下さい。
スポンサーリンク