10代後半から20代前半にかけて生えてくる親知らずは、すでに生えている他の永久歯の後に生えてくるため、まっすぐ生えることが少ない歯です。
痛みがあれば、歯科医院へ行くことでしょうが、中には、いろいろな理由であえて放置される方もおられると思います。
親知らずを放置したからといって、必ず悪影響が出るわけではありませんが、放置することで、重篤な状態になる危険性もあります。
ここでは、親知らずの放置における危険性について説明します。
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1.親知らずはどんな症状の時に、放置したら危険になってしまうのか?
親知らずが原因となり、全身に危険な状態を及ぼすこともあります。以下に病状別に説明します。
1-1.口底蜂窩織炎
まずは「口底蜂窩織炎(こうていほうかしきえん)」が挙げられます。
口底蜂窩織炎は、下顎の親知らず抜歯で周囲の歯肉が急性炎症を起こし、そこに細菌が感染すると、下顎の周囲にある筋肉の隙間を介して喉の奥のほうまで感染が広がってしまう病気です。
下顎の親知らず抜歯で、周囲の歯肉が急性炎症を起こすことは、よくあることですが、通常は1~2週間で炎症は治まります。
しかし、運悪く細菌が感染すると口底蜂窩織炎にかかってしまいます。
口底蜂窩織炎の症状としては、最初は口を開けにくい状態となり、顎の下の方も盛り上がり二重顎のような状態となります。
口底部も盛り上がりますので、舌の運動が阻害され、嚥下障害や唾が口から漏れやすくなったり、ひどくなると呼吸がしにくくなったりもします。
病状が進むにつれて、全身の倦怠感や発熱を起こし、病状が首から胸の周辺に広がっていくケースも考えられます。
このように、感染が心臓や肺まで広がってしまうと、命に関わる大変危険な状態になります。
今回親知らずが原因となるケースを書きましたが、同様の細菌感染は親知らずだけでなく、虫歯が原因でも十分に起こりうることですので、注意して下さい。
下顎の親知らずの周辺が腫れて、強い症状が出ているようだとやはり注意が必要です。歯科医院では口底蜂窩織炎を発症しないよう、抗生剤を処方して細菌感染を起こさないように消毒処置を行います。
今まで、そういった症状が何度も起こり、その都度症状がなくなるまでご自身で我慢しておられた方もいるかもしれません。
しかし、次回炎症症状が出たときに細菌感染を起こさないという保証はありません。度々問題を起こす親知らずがある場合は、早めに主治医に相談するようにしましょう。
1-2.上顎洞炎
親知らずが原因で発症する合併症の例としては、「上顎洞炎」があります。
上顎洞炎は、鼻の横には上顎洞と呼ばれる大きな空洞があり、親知らずが根っこの先の部分でこの空洞とつながっているか、非常に近くに位置している場合、抜歯による穴への細菌感染等により炎症を起こす病気です。
また、ご承知の通り、親知らずは一番奥の歯ですので、適切にブラッシングすることが難しく、虫歯になるリスクも他の歯に比べて高い傾向にあります。
親知らずが虫歯になってしまい、放置すると、虫歯が歯の根の中まで進行して、最終的に根の先のほうまで進んでしまいます。
その際、親知らずの根の先から前述の上顎洞に虫歯菌が波及して、上顎洞炎を発症することがあります。
上顎洞炎の症状としては、黄色い鼻水、鼻づまり、目、前頭部、頬部周辺の痛みや重み、腫脹などがあげられます。
また、親知らずの放置により、歯並びに変化をきたし、慢性的な頭痛がもたらされることも考えられます。更に、歯並びの変化が起こることもあり、顎関節症から開口障害を引き起こし、日々の食事に不自由することまで考えられます。
2.親知らずの放置で死亡してしまう例もあるのでしょうか?
親知らずの放置が直接の原因で死に至るようなケースは、現在のところ確認できていません。
しかし、命に関わると想定されるケースに、前述の口底蜂窩織炎が挙げられます。上顎洞炎も注意しないといけないのですが、口底蜂窩織炎と比較すると、危険性は低いと考えられます。
2-1.下顎の親知らずは要注意
下顎の特に横や斜めに隣の歯にぶつかるように生えて、歯の頭の部分が一部露出しているようなケースが最も注意すべきケースと考えられます。
このような難しいケースの親知らずの抜歯に際しては、やはり不測の事態に備えて設備の整った大きな病院で抜歯を行うことをお勧めします。
2-2.誤飲による呼吸困難
これは、親知らずに限ったケースではないのですが、過去に抜歯中に誤って抜いた歯が口の中に落下してしまい、気道を閉塞し、呼吸困難で亡くなられた事例があります。
特に小さいお子様の乳歯は注意が必要です。
抜いた歯などの口の中への落下は、どの部位の抜歯でもそうですが、特に口の奥のほうにある親知らずの抜歯では十分起こりうる可能性があることですので、歯科医師は、術前に「口の中に何かが落ちたときに慌てずに横を向いてもらう」などの説明を患者様におこないます。
患者様もそういったことが起こりうるという事を頭に入れて、いざとなったらパニックにならず冷静に主治医の指示に従いましょう。
まとめ
親知らずが遠因で命に関わると想定されるケースに、口底蜂窩織炎、上顎洞炎があります。
特に口底蜂窩織炎は、より病状が深刻になる場合がありますので、定期検診等で親知らずの状態を確認し、万が一に上述の病気にかからないよう早めに対処するようにしましょう。
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