親知らずは、他の永久歯と異なり、10代後半から20代前半くらいに生えてくる特殊な歯です。
また、親知らずは、まっすぐ生えてくることが少なく、斜め、横に生えたり、歯ぐきの中に埋没しているケースも少なからずあります。
ここでは埋没している親知らずに焦点をあて、その歯を放置することによる影響について説明します。
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1.埋没した親知らず、横向きに埋まっている親知らずをそのまま放置していても問題はないでしょうか?
まず、親知らずが正常に生えてこなくて、顎の骨の中に残っているパターンでも、生涯何も問題が起きずにそのまま経過するケースもあります。
また、稀ですが、横向きに親知らずが位置していても、問題がない場合もあります。
しかし、問題ないかどうかをご自身で判断するのは、まず困難と言っていいでしょう。
1-1.歯科医師が問題あり・なしを判断するのが最善
歯科医院で、レントゲンや歯科医師の診察で、親知らずが将来問題を起こすのか判断してもらうのが最善です。
ただし、今まで問題が起きずに経過していた場合、ある程度年齢が重ねてから、急に親知らずが生えだしてくることは稀です。
その場合は、親知らずに関する問題が起こってくる可能性は低いと考えられます。
1-2.智歯周囲炎
親知らずを放置して問題になる典型的なものは、「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」とよばれる症状です。
智歯周囲炎は、下顎の親知らずが横や斜めに向かって生えているため隣の歯にぶつかり、歯の頭の一部だけが生えてきて、ほかの部分は正常に生えてこない状態のときに頻繁にみられる症状です。
こういった状況の親知らずの周りの歯肉は柔らかく、とても不安定な状態のため、汚れがたまりやすく、また疲れにより、体の免疫機能が低下してきたときにすぐに腫れてきます。
親知らずが原因で我慢ができないほど痛みが出ているケースは大体この智歯周囲炎が疑われます。
智歯周囲炎の症状自体は、痛み止めが効かないくらいに強く出ることも多々ありますが、およそ1~2週間で体力の回復とともに症状が消えていきます。
そのため、自然に治ったと錯覚してしまう患者様もおられますが、そのままにしておきますと、免疫機能の低下に伴い容易に再発してしまいます。
智歯周囲炎は、いつ再発するか予想がつかないので、歯科医師側は、「あまり忙しくなく、時間の余裕があるときに抜いておくのが賢明でしょう」と説明する場合が多いです。
また、智歯周囲炎の症状には個人差がありますが、症状が悪い患者様だと、口も開けられない位痛み、歯ブラシもまともにできなくなる場合もあります。
更に症状が強く出ているときは、歯科麻酔もほとんど効かなくなりますので、早めに対処することをお勧めします。
1-3.隣の歯の吸収
親知らず放置で起こりうる問題の中に、親知らずの隣の歯の吸収が挙げられます。
歯の吸収は、親知らずが隣の歯に向かって動いて圧迫することによって歯が徐々に吸収されていく現象です。
この場合、歯科医院で早めの処置をしてもらうことをお勧めします。
1-4.歯並びの変化
親知らず放置で、歯並びが変化することがあります。
歯並びの変化は、親知らず以外の永久歯はすでに生えそろい、歯並びがある程度確定した後で、10代後半から20代前半くらいに生えてくる親知らずが、後から割り込むことで、隣の歯を押し、隣の歯が動きそれに伴い全体の歯まで動いて来る結果で起こります。
また、矯正治療を受けた患者様が親知らずを持っていると、前述のように予測できない力が歯に加わる場合がありますので、矯正治療できれいに並べた歯列が、元の状態に戻りやすくなるとも言われています。
1-5.治療の障害
顎の骨の中に埋まっている親知らずが問題となるケースは、歯科治療に関連したことが考えられます。
例えば、隣の数本の歯が大きく虫歯になり、ブリッジ等の大きなかぶせ物を装着した場合、治療後に親知らずが生えてくることで、その土台となる歯を押したり、吸収してしまうと、その治療をもう一度やり直しになることも考えられます。
また、親知らずの隣の歯を何らかの理由で、抜歯することになり、その後インプラント治療を行うことになった場合、顎の骨の中に埋まっている親知らずがインプラント治療の障壁になってくる場合も考えられます。
2.現状問題がなくても「こうなったら注意」という状態はあるのでしょうか?
2-1.自覚症状があるケース
前述の智歯周囲炎については、歯肉の晴れ、強い自発痛、嚥下痛、咬合痛などの強い自覚症状があります。
ただ智歯周囲炎については、自覚症状は強く出ますが、可逆的な変化ですので、適切に処置すれば問題はなくなります。
2-2.自覚症状が乏しいケース
埋没している親知らずで自覚症状が乏しいケースは注意が必要です。
例を挙げると、歯並びの変化、歯が押されている感覚の自覚、歯、特に前歯が外側に押し出されるように動いてくるなどがあります。
特に、歯が吸収されている場合は、あまり症状がなく、逆に親知らずを抜くと吸収されていた部分が露出するのでしみる症状が出てくる場合があります。
これらの症状が自覚されにくいものに関しては、不可逆的な変化になる可能性が高いので、定期的に歯科医院で状態をチェックしてもらうことが重要になってきます。
まとめ
埋没している親知らずは、自覚症状があれば、比較的歯科医院に通院し、適切な治療を受けることで問題は解決する可能性は高いですが、自覚症状が乏しい場合は、要注意です。
問題がないことは稀ですので、痛みやなくても、違和感を感じたなら、早めに歯科医院で親知らずについて診察を受けることをお勧めします。
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