楽器による生の演奏は聞いていて心地よいものです。演奏者のほうも、ご自分、もしくはグループで作曲した曲を聴き手に楽しんでもらえれば、きっと楽しく感じることでしょう。
しかし、楽器の中には吹奏楽器や、顎で支える弦楽器もあり、それが原因で顎関節症になる方もいます。
ここでは、楽器による顎関節症について説明していきます。
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1.楽器が顎関節症の原因となりえるのでしょうか?
特定の楽器を演奏する人に、顎関節症の症状が確認される事はよくあります。
例を挙げると、バイオリン、ビオラなど顎で楽器を挟んで演奏する弦楽器や、サックス、トロンボーンなど強く息を吹きこんで演奏する吹奏楽器等の演奏者があたります。
1-1.弦楽器による顎関節症
バイオリンを習っていた経験がある方はお分かりかもしれませんが、バイオリンを演奏する際に、肝となるのは顎でしっかりバイオリンを挟めているかどうかです。
バイオリンを顎でしっかり挟めていないと、演奏中にバイオリンがグラグラ動き、安定しないために上手く演奏する事ができません。そのため、ある程度バイオリンが演奏できるようになってきた人は、顎でしっかり楽器を挟んで固定しています。
ところが、この顎で挟むという行為が、演奏中の不自然な歯と歯の噛み合わせや、過度のくいしばりを起こしている場合があると考えられています。
こういった習慣が長く続きますと、顎関節にも長期間強い負担がかかっている状態となり、やがて顎関節症の症状に悩まされるという事になります。
1-2.吹奏楽器による顎関節症
吹奏楽器の場合は、マウスピースを口で挟み息を強く吹き込む物がほとんどだと思います。
実は、このマウスピースを加える時の口の形を維持する際に、顎関節やその周囲の筋肉に強く負担がかかり、顎関節症を発症してしまう方が多いという事がわかってきています。
また、同じ吹奏楽器でも、息を吹き込む部分が小さくなればなるほど、顎関節症になりやすいと言われています。これは吹き込む部分が小さいため、より口を強くすぼめ顎関節周囲の筋肉に強く力が無意識に働いてしますからです。
1-3.演奏者における顎関節の治療
治療法としては、基本的には楽器以外で顎関節症にかかった人と同様の治療になります。
具体的には、スプリントといって透明なプラスティックでできたマウスガードみたいなものを口腔内に装着して、歯と歯を正しい噛み合わせの位置に誘導させ顎関節の負担を軽減させます。
演奏者には少々辛いものがありますが、顎関節症にかかっている間は、楽器の練習量を一時的に減らしたり、休止したりすることで回復を促します。
2.楽器と同様の要因で顎関節症発症リスクになるものはあるのでしょうか?
日常生活において、顎関節に負担をかける習慣や癖は色々あります。
その中でも楽器演奏と同じようなメカニズムで、顎関節に影響を与えるもののひとつに、歯と歯のくいしばりがあります。
2-1.歯の食いしばりによる顎関節症
弦楽器の演奏の章でも述べましたが、歯と歯が強くくいしばっている状態が長く続くと顎関節に負担がかかります。
もともと、上の歯と下の歯は、日常生活においてほとんど接していません。一説には、1日で接している時間はトータルで20分位と聞いています。
食事などをしていない自然な状態で上の唇と下の唇が閉じている場合でも、上の歯と下の歯の間には、「安静位空隙」という2~3mmのスペースができています。
実は、歯と歯を強くかみしめる行為というのは、日常的に頻繁に行われる行為ではないのです。
くいしばりを日頃から繰り返し行っていると、顎関節に負担が出てくるのもある意味当然と言えるでしょう。
このかみしめという行為は、スポーツなどで強く力を入れる際にもでてきますし、また日常的に強いストレスを受けた時に無意識で行っている場合もありますので、注意してください。
2-2.クセによる顎関節症
バイオリンなどの、弦楽器で顎で楽器を挟むという行為は、頬杖をする行為に近い部分があります。
楽器を挟むと顎を下から突き上げるような力が加わりますが、頬杖をした際も顎に触れている手を介してこの下から突き上げる力が働いています。
下顎は顎関節の所まで続いていますので、当然この好ましくない力が顎関節に加わり、悪い影響を与えます。頬杖をするという行為は中学生、高校生など長期間机の前に座り、授業を受けている時はどうしてもしてしまいがちですので、そのようなクセをお持ちの方は注意するようにしましょう。
2-3.噛み方の偏りによる顎関節症
弦楽器では、決まった片方の顎(大体左側)で楽器を挟み、時々、もう片方の顎で楽器を挟んで演奏するという事はまずありません。
そのため、演奏時に歯と歯をかみしめている場合は、毎回楽器を演奏するたびに、強く片方だけを噛んでいる事になり、歯と歯の左右の噛み合わせのバランスも次第にずれてくる場合があります。
更に、歯周病等が加わりますと、歯周病によって起こる、顎の骨の吸収具合も左右の顎の骨で変わってきますので、ますます噛み合わせのずれがますます大きくなる可能性があります。
まとめ
普段から弦楽器、吹奏楽器を演奏される方は、顎関節症に対するリスクがありますので、顎関節症には十分気をつける必要があります。
もし、気になる症状が出てきた場合は、悪化する前にすぐに口腔外科や、歯科に相談するようにして下さい。
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