虫歯と並び、代表的な口腔内の病気である歯周病は、最近の研究で、誤嚥性肺炎、糖尿病、心疾患等、さまざまな全身疾患に対して、悪影響を及ぼすことが分かってきました。
ここでは、脳卒中、および脳卒中と歯周病菌との関連について、最新の研究結果を交えて説明します。
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1.脳卒中とは
脳卒中は、がん・心臓病に次いで日本人の死因の第3位となっており、いずれも手遅れになると命を落とす危険性が高い病気です。
運よく命をとりとめても、麻痺などの重症な後遺症が残ることが多く、予防・早期発見が重要です。
2.脳卒中は3種類ある
脳卒中とは脳の血管に起こる病気の総称です。
脳卒中は「脳梗塞」、「脳出血」、「くも膜下出血」の3種類に分類されます。
脳梗塞は、脳血管が「詰まる」ことにより発症する病気であるのに対して、脳出血、くも膜下出血は、脳血管が「破れる」ことにより発症する病気です。
2-1.脳梗塞
脳梗塞は脳のある領域に血液がいかなくなり、血液がいかなくなった脳の部分が死んでしまい、障害が出る病気です。
2-2.脳出血
脳出血は、脳の中にある小さな血管が切れて破れてしまい、そこから出血が起こり、この出血により脳を圧迫、破壊して症状があらわれる病気です。
上述の脳梗塞と脳出血はともに、「脳の中」で起こる病気です。
2-3.くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の表面の血管に脳動脈瘤という「こぶ」ができてしまい、その「こぶ」が破れて脳の表面に出血する病気です。
出血は脳の表面であるくも膜下に溢れるため、その出血量が多ければ多いほど脳が圧迫されることで、脳が破壊されていきます。
3.脳卒中の症状
脳梗塞と脳出血の代表的症状は、顔の右か左の半分、片方の手・足が突然に動かなくなる片側麻痺がもっとも多くみられる症状です。
両側の指先がしびれるような場合については、脳卒中の症状ではありません。
具体的な症状としては、突然、呂律が回らない、言葉が出なくなる、相手の言葉を理解できなくなる言語障害、視野が二重にみえたりする視覚障害があります。
くも膜下出血では、今までに経験したことのない激しい頭痛が特徴です。重症の場合は意識障害も生じます。
頭痛の強さは発症時にピークに達し、その後も痛みは持続します。同時に、嘔吐することもあります。「最近なんとなく頭が痛い」、といったような場合は、くも膜下出血ではありません。
4.脳卒中の代表的な危険因子
脳卒中発症の代表的な危険因子として、高血圧、糖尿病、高コレステロールが挙げられます。
これらの危険因子は、不摂生な生活習慣、喫煙,過度の飲酒等が主な要因となります。
高血圧は文字通り、血圧が高くなることで、血管が圧力に耐えられなくなり、破裂しやすくなります。
糖尿病では、血液中の糖分により、血管がボロボロになっていきます。
高コレステロールでは、コレステロールにより血がドロドロになるのと、コレステロール自体が血管の内側の壁に堆積することで、血管がつまりやすくなったりします。
これらの血管に対するトラブルが脳の血管で生じると、脳卒中を発症します。
5.歯周病は脳卒中の危険因子の一つ
まず、口腔内には30~40種類の細菌がいます。これらは大きく善玉菌と悪玉菌の2種類に分かれます。
5-1.歯周病
歯周病は口腔内の歯垢(プラーク)や、歯石が残したまま放置されることで、悪玉菌の一つである歯周病原細菌が増殖してしまい、歯を支える骨に感染し、最終的には骨を溶かしてしまう病気です。
最近の研究で、口腔内で増えた歯周病原細菌が、血液を介して全身へ運ばれ、血管や臓器にダメージを与えることで、全身疾患に悪影響を及ぼすことが分かってきました。
5-2.歯周病と脳卒中の関連
歯周病と脳卒中との関連に関しては、追跡調査 による歯周病のリスクの解析が2000年に行われました。
その結果,歯周炎において、明らかな脳卒中の発症が認められました。
また、内科医の細見直永氏は、2015年に脳梗塞患者に対して、歯周病菌の種類との因果関係を調査しました。
調査の結果、歯周病原細菌の一つであるPrevotella intermediαの存在を示す抗体価が、血液中で高い値を示し、動脈硬化との関連性が示唆されました。
また、上述とは異なる歯周病原細菌であるPorphyromongingivalisの存在を示す抗体価の上昇により、心房細動との関連性が示唆されました。
上述の調査結果から、歯周病菌の種類により、脳梗塞を引き起こす仕組みが異なる可能性があることが分かり、今後ますます脳卒中と歯周病の関係の解明が求められています。
まとめ
歯周病は、日本人成人の約80%が罹患していると言われています。
歯周病菌感染による、脳卒中発症の仕組みは、まだ十分に明らかになっているとは言えません。
しかしながら、歯周病が全身疾患の危険因子であることは十分に示されており、脳卒中に関しても、さまざまな追跡調査がなされています。
歯周病の代表的な症状である、歯ぐきから血がでる、口臭が気になる、歯肉が腫れる等がある方は、早めに歯科医院で検査を受けましょう。
歯周病は、日本人の多くが罹患しているからと言って、決して放置していい病気ではないのです。
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