歯は、虫歯菌によって歯に穴が開く病気です。虫歯は多くの人がかかる病気ですが、治療のために通院に躊躇することの多い病気でもあります。
躊躇する理由は、過去に痛みを伴う治療を受けた、ドリルの音を聞いた等ある種の負のイメージによるところが多いです。
このように、虫歯は痛いというイメージが強いと思いますが、実は初期の虫歯は一部の例外を除き、痛みはないのです。
ここでは初期の虫歯に焦点をあてて、詳しく説明していこうと思います。
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1.虫歯の症状の段階
初期の虫歯について話をする前に、まず虫歯には進行状態により段階があることから説明します。
歯科では、虫歯の進行状態を、C+数字(0,1,2,3,4)で表記します。このCは虫歯の英語名である、カリエス(Caries)の頭文字からきています。
C0は一番症状が軽く、数字が大きくなるにつれて、症状が悪くなり、C4は歯の根元まで虫歯菌が侵食した、一番症状が重い末期の状態になります。
初期の虫歯はC0, C1が該当します。
2.初期の虫歯はなぜ痛まない?
歯の一番外層にある固い層をエナメル質といいます。
エナメル質は、髪の毛、爪と同様、エナメル質の内部には神経が通っていないため、痛みを感じません。
初期の虫歯の状態であるC0, C1で痛みがないのは、虫歯菌の侵食でできた穴がエナメル質内にとどまっているからです。
エナメル質は、人体の中で最も硬い組織です。しかし、一方でエナメル質は酸に弱い性質も持っています。したがって、できるだけ早く口の中を中性に戻す事が重要です。
医学(発生学)的には外胚葉と呼ばれるものからエナメル質が作られます。
エナメル質はその内部に有る大切な歯の各種組織を守る重要な役割を担っています。
ここからは、初期の虫歯である、C0, C1について詳しく説明します。
2-1.C0
C0は、一番初期の虫歯の状態です。特徴としては、虫歯の部分の歯の色が、エナメル質特有の透明感が無くなり、白いチョークのような白濁した状態になっています。また、歯の溝が茶色く見えることもあります。
痛みがないため自覚症状はなく、見た目でも穴が開いている部分が分かりにくいため、普通の人は気づかない事もあります。
C0状態での対処は、歯磨き、フッ素塗布、キシリトール等で、元の健康な歯の状態に戻すことが出来ます。
歯科では、昔はC0であっても白濁した部分を削る治療が主流でしたが、最近では歯の再石灰化(再生)を促すため、経過観察ですませる事が多くなってきています。
2-2.C1
C1は、エナメル質が虫歯菌による浸食で、浅い穴(う窩)が出来た状態です。
ただその穴はエナメル質内にとどまっているため、C0同様、痛みの症状は通常は出ません。
C1で痛みが発生するケース(例外)は、歯肉との境目でC1状態の虫歯がある場合です。
歯肉との境目の部分はエナメル質が非常に薄いため、C1レベルの浅い穴でもエナメル質が貫通してしまいます。虫歯菌による浸食により、エナメル質を貫通してしまうとその下の層は神経が通っているため、C1状態の浅い穴でも痛みを発生してしまうのです。
C1状態での虫歯の色は、CO同様白濁しています。歯の溝は虫歯菌の侵食による影響で、C0より更に溝が深くなり、色は黒く見えることがあります。
黒くなる原因は、一説には、歯周病菌の原因菌であるP.i菌、P.g菌が関与しているとも言われていますが、ハッキリとした事は、残念ながら分かっていません。
C1状態での対処は、虫歯になっている部分を取り除いて、代りに樹脂や金属を詰めて治療をします。
例外として挙げた、エナメル質が薄い部分の虫歯を除けば、麻酔を使わなくても治療が行うことができます。
3.虫歯がさらに進行すると?
虫歯が更に進行すると、エナメル質を貫通して、下の層にまで到達します。この状態をC2といいます。
エナメル質の下の層は、象牙質と呼ばれ、神経が通っているため、甘いもの、冷たいものがしみたり、痛みを感じたりします。世間一般で言う虫歯による痛みの症状は、大半がC2以降で発生する症状です。
更に虫歯菌による浸食が進行すると、C3,C4まで症状が悪化します。
まとめ
虫歯は原因を知ることによって、ご自身の大切な歯を守り、予防ができる病気です。
また、歯科医療の進歩により、新しい虫歯の治療法もどんどん開発されています。
しかし、医学がどんなに進歩しようと、早期発見、早期治療が病気を治す上での鉄則です。これは、虫歯も例外ではありません。
ただ、初期の虫歯は、痛みがなく虫歯の症状を自覚しにくいため、ご自身ではなかなか気づきにくいのが厄介なところです。
ですので、この機会に、ご自分の健康な歯を維持するためにも、定期検診で虫歯がないかどうかチェックするようにしましょう。
もし、不幸にして虫歯になっていたら、痛みの有無に関わらず、出来るだけ早く治療を受けるようにして下さい。
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