病気には、その発症に遺伝子が直接関与しているダウン症のようなものもあれば、間接的に関与しているものもあります。
例えば高血圧や糖尿病がそれです。つまり、遺伝子と病気というのは、必ず強い関係があるというわけではなく、病気によってその影響も様々といえます。
では虫歯についてはどうなのでしょうか。
ここでは、遺伝で虫歯になりやすい体質になるのか、もしくは遺伝子が直接虫歯の発症に関係しているのかについて説明します。
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1.虫歯を引き起こす遺伝子は見つかっていない
まず始めに、何らかの遺伝子が直接虫歯を引き起こすということはありません。ですから、親が虫歯を患っているからといって、その子供も必ず虫歯を患うということではありません。
現在、世界中でそうした虫歯を引き起こす遺伝子は発見されていませんし、虫歯を遺伝子病であるといっている歯科医師や研究者もまずいないと思います。
では、虫歯と遺伝子には全く関りがないのかといったら、それは間違いといえます。
2.遺伝子によって虫歯になりやすい体質になることはある
遺伝子というのは、何かの病気を直接的に引き起こすこともあれば、間接的に影響を与えることもあります。
これは虫歯も例外ではなく、特定の遺伝子が原因で虫歯になりやすい体質にしている面も否定できないのです。
一番わかりやすいのが歯を作る遺伝子が挙げられます。
例えば、遺伝により、普通の人よりエナメル質が薄かったり、象牙質が脆かったりする場合があります。これらは親から引き継いだ遺伝子によって決まっているといえます。
程度問題ではあるのですが、親の遺伝子によって外からの刺激に比較的弱い歯が生えてくるケースもありえると言えるのです。
歯の表面を覆っているエナメル質が薄かったり弱かったりすると、少しの刺激で簡単に傷ついてしまうことがあります。その傷に虫歯菌が感染し、結果として虫歯を引き起こしてしまうのです。
3.唾液分泌の減少は遺伝することもある
虫歯と遺伝について考える上で次に重要なのが、唾液です。
唾液というのは、唾液腺と呼ばれる組織から分泌され、虫歯予防に大いに役立っています。というのも、虫歯を引き起こすのは虫歯菌ですが、二次的な原因として口の中の乾燥も挙げられるのです。
当然のことですが、口の中を湿らせているのは唾液です。その唾液は食べカスや歯垢、それから虫歯菌など病原体を喉の奥へと流し込む役割を果たしています。
これを唾液による自浄作用と呼び、唾液が正常に分泌されることで虫歯菌の増殖や歯への定着を妨げているのです。そこで関連付けられるのが遺伝です。
例えば唾液の分泌量を少なくするような遺伝子を引き継いだ場合は、ドライマウスなどの症状が現れやすい体質になります。すると、お口の中が慢性的に乾燥し、虫歯になりやすくなってしまうのです。
4.遺伝と勘違いしやすい虫歯菌の母子感染
実は、母親が虫歯にかかっていると、その赤ちゃんや子供も虫歯にかかっている割合は非常に高い傾向があります。
これが遺伝で虫歯になりやすい体質を生んでいると誤解させているのでしょう。けれども、実際はまた別の要因がここには関与しています。
それは虫歯菌の母子感染です。
赤ちゃんが虫歯菌に感染するきっかけの多くは、母親とのスキンシップなどがあります。愛情表現のひとつとしてキスをしたり、食べ物を口移しで与えたり、あるいは母親が使っているスプーンや歯ブラシを共有することで、子供が虫歯に感染するリスクは高まります。
どれも普通の母親であれば子供に対して行っていることですので、実際は虫歯菌の母子感染がいつ起こってもおかしくはないと言えるのです。
これが一見すると、体質などが遺伝したことによって、子供も虫歯になってしまったのだと勘違いしてしまう原因と言えます。
まとめ
上述のとおり、虫歯の直接的な原因は遺伝子ではありませんが、虫歯になりやすい体質というのは遺伝する可能性があります。
ですので、もともと歯質が弱かったり、唾液の分泌が少なかったりする場合は、子供の虫歯予防に力を入れることをお勧めします。
特に母子感染を防止することは、子供の将来に渡るお口の健康を守る上で非常に重要なポイントといえます。
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